旅行・地域

2011年10月 5日 (水)

黄色い紅河: ダムは河の色まで変える

九月中旬に二週間余り、学生二人を連れて、中国雲南省の揚子江上流域(金沙江と呼ばれる)に調査に行って来た。揚子江上流域の有る雲南省西部には、実は、アジアの主要河川であるサルウィーン河、メコン河、紅河、揚子江の上流域が集まっている。そこで調査の後半にこれら大河川の上流域を全て周り、河川水、河川懸濁物、河床堆積物の試料を採取して回った。その際、紅河の上流域から河に沿ってベトナムとの国境の町、「河口」まで下った際の話である。

Red_river_1_2我々は先ず、保山から高速を南西に向かい、国道が紅河を渡った地点で高速を降りた。紅河にかかる橋は高さ170m余りで、世界で最も高い橋脚を持った橋だそうである。橋から見た紅河は、まさしく紅色をした河で、その紅色は、亜熱帯気候下で夏季モンスーン降水の影響を受けて形成された紅い土壌起源の砕屑粒子による事が容易に想像される。「その名の通り紅河だ」などと話しながら河沿いを車で下った。

 

道はごく最近整備されたようで、片側1車線の舗装道路が続く。やがて、川幅が広がり、流れが緩くなってきた事に気がついた。同時に、心なしか河の色が褐色がかっている。首をかしげながらさらに進むと河の流れは淀み、その色は緑がかって透明度が増して来た。これは、紅色の原因となる懸濁粒子の大きさが比較的粗くて(恐らく数十ミクロン前後)早く沈降するのに対して、より細粒でより長時間浮遊していられる細粒(恐らく10ミクロン以下)の粒子の色が黄褐色をしているためと考えられる。流れがなくなって長時間攪拌されずにいると、やがて懸濁粒子はそのほとんどが沈降し、植物性プランクトンが浮遊するのみとなる。これが半透明の緑がかった色の原因である。

Red_river_2_2 下流にダムがあるのではないかと想像しながら更に下ると予想通り完成間近のダムが出現した。高さは50m強、中規模のダムである。ダムからは、緑がかったやや透明な水が放流されている。更に下ると支流からの水が加わって河は再び濁るが、その色は黄色がかった褐色である。こうした褐色の河の色は、ベトナムとの国境の町、河口まで続く。しかし、河岸より少し高い所に堆積している河泥は紅色をしており、つい最近まで、河が紅色に懸濁していた事を示唆する。

時間の関係で、我々はベトナムには入らなかったので、紅河の褐色の色が海に至るまで続いたかどうかは確かめられなかったが、多分、褐色のままなのではないだろうか。ダムは河の色まで変えてしまったのである。

Red_river_3実は、アジアには、複数の国にまたがって流れる大河川が 多数存在する。そして、上流域の国(多くの場合は中国なのだが)が、治水や発電のためにダムを作り、それが下流域の国の国益を損なうために、国際問題になる事例が多発している。せめて、ダムを作ろうとする国の施政者に、ダムを作る前と後で下流域の景観や河川に依存する人々の生活がどう変わったかを、自分の目で見て体感させることが出来たら、多国籍河川にまつわる問題も少しは減るのではなかろうか?