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2013年9月 5日 (木)

統合国際深海掘削計画(IODP)日本海・東シナ海掘削

 しばらく、ご無沙汰しておりましたが、実は、7月末から2か月間の予定で、日本海及び東シナ海の計8地点を科学掘削する目的で、統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program; IODP)による、アメリカの科学掘削船ジョイデス・レゾリューション号(通称JR18000 t)を使った第346次航海(Expedition 346)に主席研究員として乗船しています。現在は、能登半島の西約250kmの地点を掘削している最中です。

今回の航海における掘削の主目的は、日本海堆積物に刻まれた過去の気候海洋変動の記録を解析し、夏の梅雨と冬の木枯らしに象徴される東アジアのモンスーン気候が、何が原因で、いつごろから、どの様に発達してきたか、また、どの様な周期で、どの程度変動してきたかを明らかにすることを目的としています。しかし、実はこうした科学目的に加えて、私にはIODPに対する深い思い入れがあります。

国際的組織による科学目的の深海掘削計画の歴史は古く、その始まりは1960年代までさかのぼります。その初期においてはDeep Sea Drilling ProjectDSDP)と呼ばれ、アメリカが主催し、世界各国の科学者がその計画に参加する形で行われていました。世界各国から著名な研究者がこぞって乗船し、フロンティアスピリットのもと、数々の独創的な研究を主導してきました。例えばプレートテクトニクスの概念の確立にも大きく貢献しましたし、氷期間氷期サイクルが地球軌道要素の周期的変化に起因する日射量分布変動(ミランコビッチサイクル)を反映している事も実証しました。

私が初めて深海掘削計画に参加したのは1989年のJR号を使ったOcean Drilling Program (ODP)127次航海「日本海掘削」で、当時まだ35歳でした。世界各国から参加した20名を超える様々な年齢の科学者たちと、時には熱い議論を戦わせ、時には苦労を分かち合いながら、2か月間衣食住を共にした経験は、本当に忘れがたいものでした。この経験を通じて、科学における、人間同士としての相互理解、協力、信頼、友情と言ったものの重要性を肌身で感じ、海外に多くの友人を得ることが出来ました。

その後、私は、日本海堆積物を用いた古気候・古海洋学的研究に研究の方法性を転じ、2003年にIODPに日本海再掘削計画の申請書を提出しました。そして、10年の年月を経てやっと望みがかない、こうしてJR号に乗って日本海に戻ってきました。その間にJR号は大きく改装して実験室スペース、居住スペースを拡充し、本航海では、10か国から34名の科学者が参加しています。更に24名の科学支援員、60余名の船員を加え、総勢120名を超える人たちが力を合わせて掘削を行っています。

今回の航海のもう一人の主席研究員であるMurray博士は、実は、前回の127次航海の乗船研究員仲間で、彼は当時まだ学生でした。それが24年後の今、今度は主席研究員として、再び一緒に乗船している事には、お互い、感慨深いものがあります。乗船準備や乗船者の人選は、1年以上前から始まりましたが、二人は、「様々な国から来た、様々な分野、様々な世代の研究者達が、互いに協力しながら、いかにして一つの大目的を達成させるか、ということを、この航海を通して若い世代に体験させたい」という思いで一致しました。それは、既に始まりつつある全地球的な気候変動や環境危機にかかわる諸問題を解決するには、相互理解と協力の重要性を十分理解した科学者の存在が、今後さらに重要になってくると感じていたからです。

今回の航海には、日本からは私も含め8名の科学者が乗船しています。20代が2名、30代が3名、40代が1名、50代が2名という年齢構成で、若手~中堅の育成を意識した夫人です。航海の様子は、写真付きで、以下のホームページで随時報告していますので、ご覧いただければ幸いです。

 

日本地球掘削科学コンソーシアム:

http://www.facebook.com/JapanDrillingEarthScienceConsortium

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