« Parrenin et al. (2013) Science, 339, 1060-1063. 氷期‐間氷期サイクルにおける大気CO2濃度変動の役割 | トップページ | 「気候変動を理学する」 サイエンスカフェの余韻を本に »

2013年3月25日 (月)

Tokinaga et al. (2012) Nature, 491, 439-443. 近年の赤道太平洋でのウォーカー循環の弱化は、東西の海水温分布の変化によっている

“Slowdown of the Walker circulation driven by tropical Indo-Pacific warming”

 

 20世紀を通じて、赤道太平洋におけるウォーカー循環が徐々に弱まっていることは、観測記録から既に示されている。その原因は、一般に、地球温暖化に伴う水循環の弱化と考えられている。しかし、温暖化に伴う表層水温(SST)の空間分布の変化の影響については、これまできちんと評価されていなかった。その原因として考えられるのが、太平洋赤道域におけるSST上昇の空間パターンの復元の不確実性である。これはSSTの測定手法やその空間分布の解析手法が時代と共に変わってきたことに原因があるようだ。本研究では、手法が一貫していて信頼性も高い、バケツによる採水した表層水の直接水温測定データのみを用いて復元を行った。その結果、東赤道太平洋と西赤道太平洋の間の水温差が時代と共に減少してきたことが明らかになった。これは、これまでの再解析データにおいて示された傾向と逆であるが、夜間における海上気温おける傾向とはよく合っている。

 本研究では、こうした赤道太平洋域におけるSST上昇の空間分布パターンの大気循環への影響を評価するため、復元されたSST空間分布の変化を境界条件として大気大循環モデル(AGCM)に与え、その影響の評価を試みた。その結果、ウォーカー循環の弱化が復元されると共に、循環とそれに伴う降水域の位置が、当方にシフトする事がしめされた。これは、均一の温暖化に伴う水循環の弱化ではなくSST上昇の空間パターンの変化が1950-2009年におけるウォーカー循環の弱化の主原因であることを示している。

では、SST分布の変化の原因は何なのか?CMIP5の大気海洋大循環モデルにおいて、地球温暖化に伴って赤道太平洋における東西の温度勾配が小さくなることが示されているものの、その規模は、今回の結果を説明するのに十分ではない。論文では、人為的な要因による燃焼起源のエアロゾルの増加の可能性を指摘しているものの、現時点では解明には至っていないようである。

« Parrenin et al. (2013) Science, 339, 1060-1063. 氷期‐間氷期サイクルにおける大気CO2濃度変動の役割 | トップページ | 「気候変動を理学する」 サイエンスカフェの余韻を本に »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564454/57027442

この記事へのトラックバック一覧です: Tokinaga et al. (2012) Nature, 491, 439-443. 近年の赤道太平洋でのウォーカー循環の弱化は、東西の海水温分布の変化によっている:

« Parrenin et al. (2013) Science, 339, 1060-1063. 氷期‐間氷期サイクルにおける大気CO2濃度変動の役割 | トップページ | 「気候変動を理学する」 サイエンスカフェの余韻を本に »