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2013年3月31日 (日)

「気候変動を理学する」 サイエンスカフェの余韻を本に

 思い返せば、今から2年以上前のことである。日立環境財団に勤める私の高校の同級生が、突然、私の部屋を訪れ、今度財団で、気候変動に焦点を当てたサイエンスカフェをやりたいと言う。しかも、結果だけを派手に取り上げて好奇心を煽るような皮層的議論ではなく、キチンと原理にまで立ち帰って、問題の本質を理解しようとする議論が出来る様なサイエンスカフェをやりたいと言うのである。普段なら迷うところだが、50も半ばを過ぎ、これまで自分がやってきた研究の社会的意味を考えたい、と思っていたところだったので、二つ返事で引受けた。内容は、私が同僚たちの協力を得つつ長年やってきた「地球システム進化学」、「地球史学」、「古気候古海洋学」などの講義ノートから話題を拾い出して構成した。科学好きの一般の方々を対象に、理系選択の高校生~大学教養レベルの読者を想定しつつ、最小限の数式や化学式を使いつつも、専門用語は極力避け、解りやすい語り口を意識しながら毎回準備をした。聴衆は、毎回50名近く集まり、上手いタイミングで、程よい質問をして下さる常連さんも出来て、予想以上に楽しい企画になった。高校の同級生達が毎回きてくれ、カフェの後に慰労の飲み会を開いてくれたことにも、随分元気付けられた。自分の地球環境観にある程度賛同してくれる人がいることも分かり、それなりの自信も付いた。5回のシリーズの最後、2010年の暮れに最終回となったが、これで終わりかと寂しい思いにかられた事をよく覚えている。

 その後、日立環境財団の後押しもあって、サイエンスカフェの講義録を出版する話が湧き上がった。何社からかお誘いがあったが、私の講義録を一番よく読み込み、私が伝えたいと思っていたポイントを一番よく理解してくださったみすず書房にお願いすることにした。

 本を書くと言うのは、本当に大変なことである。日立環境財団で書き起こして下さった講演録があるから何とかなるだろうとたかをくくっていたが、やはり、話を聞くのと書かれたものを読むのは随分異なる。サイエンスカフェでの会話の雰囲気を残しつつ、内容を正確に、かつ解りやすく伝えることの難しさを改めて味わった。みすずの編集者の方のご助力無しには、この本は完成しなかっただろう。また、幾つか細かいところで、私の記憶違いや理解不足による誤りも見つかった。全て十分に理解した上でお話ししたつもりだったが、それでも、実はそうでなかった部分もあった。本を読んで頂けばわかるが、本書は、地学はもちろん、物理、化学、生物学に関係した幅広い内容を扱っている。一つ一つはそれ程難しい内容では無いが、それらが有機的に、複雑に絡み合った話が随所に出てくる。そうした箇所で、厳密な意味での専門分野でないがゆえに見落としてしまいがちな落とし穴が結構あることに気づかされ、出版直前になって、少し不安になっている今日この頃である。

 とは言え、私が長年やってきた研究を通じて、今、社会に伝えたいと思っていることを精いっぱい話し、書いたつもりである。是非、お読み頂き、ご意見、ご批判を頂ければ幸いである。本は、4月初旬にみすず書房から発売予定である。

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