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2012年6月18日 (月)

「文明と環境」研究の新しいうねり

週末に地球研で行われた気候変動と文明の盛衰に関する文理融合型シンポジウムに参加して、久々に面白く、胸踊る議論を楽しんだ。実は、およそ20年前に、当時、日文研に居られた梅原猛さん、安田喜憲さんらが主導する重点領域研究「文明と環境」に参加していたのだが、その頃のワクワク感を思い出した。当時は、文明の発達や崩壊と言った人間社会における現象の原因は、社会自体に内在する原因に起因するものと考えられており、環境の変動が社会構造やその変化に影響を与えると言う考え方は「環境決定論」と呼ばれて忌み嫌われていた時代だった。(それは、地質学において「斉一説」が崇拝され、隕石の衝突により生物が絶滅するなどという説は、ご都合主義の「天変地異説」だと言って取り合わなかった時代が続いたことと似ている)この状況に風穴を空けたのが、梅原さんや安田さん達であった。それから20年余り、こうした議論からは遠ざかっていたのだが、今回、機会があってシンポジウムに参加し、このテーマをめぐる現状や諸問題に関して、特に文系の若手~中堅の研究者の方々の話を聞くことができた。それによると、2000年台に入って膨大な古気候データを背景に理系の研究者を中心に展開された、気候環境変動が文明の盛衰を引き起こしたとする議論の影響は文系研究者にまで及び、2000年代はいわゆる「環境決定論」が席巻した時代であった様である。それにより、もはや環境変動が社会構造に全く影響しないと主張する文系の学者は居なくなったようであるが、一方で、理系研究者達の議論は、どうもタイミングやパターン合わせに終始し、文明の繁栄や崩壊のプロセスやメカニズムにほとんど立ち入って居ないように感じる。また、全ての原因を環境変動に求めようとする環境決定論的姿勢が強すぎ、社会構造や文化、文明の特性に内在する原因を無視した議論が展開される事に彼らも違和感を抱いているようだった。シンポジウムに出席された文系研究者がリベラルで環境変動が文明に影響するという考え方を積極的に受け入れる方々であった事もあるのだろうが、環境変動の影響を積極的に受け入れると共に、その社会への影響を具体的に記述し、定量的に評価することを通じて、環境変動以外の原因を洗い出そうとする考え方や研究姿勢が明確に示された事には、新鮮さを感じると共に、新たなうねりを予感させた。

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