« 「文明と環境」研究の新しいうねり | トップページ | 「プロメテウス」は救いようがない映画だ »

2012年6月30日 (土)

Martin-Puertas et al. (2012) Nature Geo, 5, 397-401. 太陽活動が大気循環を変化させた?

"Regional atmospheric circulation shifts induced by a grand solar minimum"

太陽活動と気候変動の関係については、特に古気候学者を中心に、昔から言われ続けているが、両者をつなぐメカニズムが十分に明らかにされず、パターン合わせに終始した研究が多い。その為、中々気象学者らの納得を得られずにいる。また、変動のタイミングや位相関係の検証が不十分であることも支持を得られない原因である。

この論文は年縞により詳細な時間メモリが入った湖堆積物を用いて、風の強さの指標と考えられる年縞の厚さと太陽活動の指標である10Be堆積速度の変化を3300年前~2000年前について調べ、Homeric Minimumと呼ばれる太陽活動極小期(27502550年前)に、10Beフラックスの増加とほとんど同時に年縞の厚さが増大したことを示した。年縞の厚さは珪藻の繁殖に起因し、強い風によって湖水が混合されることにより栄養塩が有光層に湧昇したことによると解釈すると、太陽活動の低下とほとんど同時に調査地域における卓越風の強さが増大したことを意味する。この地域の冬の卓越風の強さは、北大西洋振動(NAO)に支配されることから、筆者らはNAOの負のフェーズでのストームトラックの南下を意味すると解釈し、その結果は観測やモデルから推測されるヨーロッパ地域における太陽活動の影響とも調和的である事を示している。そして、太陽活動に伴う紫外線の変化がオゾン濃度の変化を引き起こし、それが温室効果の程度を変えることを通じて大気循環の変動を引き起こしたとする、いわゆるトップダウンの過程に起因する証拠であると主張している。

 複数の高時間解像度の古気候データを同一の記録媒体(年縞堆積物)から取り出し、位相関係を10年程度の高い時間解像度で議論した事、その結果を、定性的にではあるが観測データやモデル結果により検証した点が新しいといえるが、使っている気候指標の評価がかなり甘いと言わざるを得ない。アイデア先行の予定調和的論文と言えるだろう。

« 「文明と環境」研究の新しいうねり | トップページ | 「プロメテウス」は救いようがない映画だ »

学問・資格」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564454/55081629

この記事へのトラックバック一覧です: Martin-Puertas et al. (2012) Nature Geo, 5, 397-401. 太陽活動が大気循環を変化させた?:

« 「文明と環境」研究の新しいうねり | トップページ | 「プロメテウス」は救いようがない映画だ »